インフラ整備や働き方 限界が露呈した1年 編集部が選ぶ2018年建設10大ニュース

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2018年もあと少し。新建新聞は1年を振り返り、建設業にとって注目の出来事・ニュースをピックアップした。そこから見えてきたのは、インフラ整備をはじめ、日本の経済社会を動かしてきた手法やルールの限界だ。それが最も顕著にあらわれたのが、度重なる災害。このままでは日本の存続が危ういという認識が市民のコンセンサスになりつつあり、その意味では、公共事業や建設業にとって分水嶺の1年だったといえるだろう。
(新建新聞編集部)


1位 インフラ脆弱性露呈

 

日本漢字能力検定協会が毎年選出している「今年の漢字」で、2018年に選ばれたのは「災」。北海道胆振東部地震、大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号・24号など、まさに今年は多くの災害が日本列島を襲った年だった。それによって露呈したのは、日本のインフラの脆弱性だ。

 

北海道胆振東部地震の衝撃は、振動に誘発された大規模な土砂崩落や液状化、そして全道で電力が停止した未曽有の「ブラックアウト」。巨大な発電所に電力供給を集約させることの脆さが浮き彫りとなった。

 

こうした例は今年、至るところで見られ、平成最悪の水害をもたらした西日本豪雨では22河川で堤防が決壊し市民生活と経済活動が完全に麻痺。台風21号では関西国際空港が高潮で冠水したのみならず、風にあおられたタンカーが連絡橋に衝突、約3000人が孤立した。

 

「インフラ予算がもっと伸びていれば」という市民の声は、国土強靭化を大胆に進められない政治・行政システム、あるいは地域の切実な問題を解決できない技術環境に対する嘆きにほかならない。今年はそうした不信・不満が限界に来た年でもあり、その意味では油圧機器メーカー大手のKYBによる免震・制振ダンパーの検査データ改ざん問題も同様だ。大臣認定という「お墨付き」への信頼は地に堕ちた。

 

12月、政府が老朽化した重要インフラを補修するため2018度から20年度までの3年間で7兆円超を投じる方針を固めたのは当然だ。これを含め、来年度当初予算案における国土交通省の公共事業費は15.1%増と、過去5年の伸び率を大幅に上まわる。いまはまさに、無駄な投資と批判されてきた公共事業が市民の望む必要な公共事業へと変わる分水嶺だ。

 

2位 極端化する気象

 

2月に福井を襲った「福井豪雪」、災害級といわれた今年の猛暑、今年も発生したゲリラ豪雨。もはや極端な気象は「異常」でも「想定外」でもない──。そのことを表すかのように、長野県でも今年、小中学校でのエアコン設置が決まった。1位に選んだ「インフラ脆弱性露呈」と地続きの2位。

 

3位 「働き方改革関連法」成立

 

6月29日に成立した「働き方改革関連法」。このうち建設業に大きく関わるのが時間外労働の上限規制だ。規制適用まで5年の猶予が与えられているものの、週休2日制の導入でさえ実現が難しい建設業において、果たしてこの5年間で対応ができるのか。そして業務系には5年の猶予もない。

 

4位 i-Conロゴマーク決定

 

i-Constructionのロゴマークが6月1日に決まった。国土交通省はマークの制定について「従来の3Kのイメージを払拭し、新3K(給与が良い・休暇がとれる・希望がもてる)の魅力ある現場に劇的に変わっていくため」としている。

 

とはいえ地方の建設企業では、効果と必要性はわかっていても、かけるコストに対して「割に合わない」という認識が大半なのがi-Conだ。そうしたなかでのロゴマーク決定は、i-Conの本格化を意味するのか、それとも地方でなかなか導入が進まないことに対するある種のきっかけづくりなのか。

 

いずれにしろ、担い手不足・少子高齢化が続く建設業において、生産性向上は喫緊の課題。i-Conは必須で、流れは止まらない。

 

5位 阿部知事3選

 

8月、阿部守一長野県知事が3選を決めた。選挙戦から訴えてきた公約のなかでも、ソフト・ハード両面からの防災・減災対策、建設業を含めた産業の振興は、重要な位置を占めている。今後の県政運営に寄せられる期待は大きい。

 

6位 中部横断自動車道「佐久南-八千穂高原」開通

 

中部横断自動車道「佐久南-八千穂高原」間の14.6kmが4月28日、開通した。静岡市と小諸市を結ぶ全線のうちの一部だが、県内では目玉の大型工事のうちの一つだった。高規格道路が周辺地域の暮らしにもたらす効果を一般の市民にどう伝えていくのかも、現在の建設業では重要で、広く市民を呼び人気となった開通式や、地域に配布した開通記念冊子など、「市民広報」の試みにも注目が集まった。

 

7位 長野県の建築が高評価

 

今年は長野県の建築が高い評価を得た。第61回建築士会全国大会の地域実践活動で、安曇野支部の活動「ツミキノチカラ」が最優秀賞を受賞。昨年は佐久支部も同賞を受賞しており、長野県勢の最優秀賞受賞は2年連続だ。

 

公共建築協会が主催する公共建築賞では、長野県立こころの医療センターが優秀賞を受賞。日本建築士事務所協会連合会が今年度の日事連建築賞・小規模建築部門で優秀賞に選んだのは、南相木村移住定住促進施設「たまる家」を設計した横山建築研究室だった。

木材利用推進中央協議会が行う木材利用優良施設コンクールでは、長野県産材(齋藤木材工業供給)を利用した「江東区立有明西学園」が内閣総理大臣賞を受けたほか「朝日村役場」が林野庁長官賞を受賞した。

 

8位 M&A

 

川中島建設が中部建設工業を吸収合併するとした8月の発表は、県内建設業界で大きなニュースとなり、新建新聞のホームページ「新建新聞デジタル」でも多くのアクセスを呼んだ。

 

以前のM&Aは顧客層の拡大にウエイトが置かれたが、現在のM&Aは人材や機械を一括で統合できる点こそメリットだといわれている。あるゼネコン社長は今後について「あと継ぎのいない経営者が金融機関から提案されるなどして、会社が健全なうちに合併を選択するケースが増えるのではないか」とみる。

 

9位 小中高生向け見学会が活発

 

今年は全県下で小中高生向け見学会や出張講座が活発だった。単に数が多かっただけでなく、「長野県建設産業担い手確保・育成地域連携ネットワーク会議」が模索するような、既に進路が決まっている工業系の高校ではなく普通科へのアプローチや、インターンシップ受け入れによる体験型へのシフト、中学生や小学生などこれから進路を考える年齢に向けたアピール、保護者向けの出前講座など、取り組みの手法も変わりつつある。

 

10位 出入国管理法改正が成立

 

12月、単純労働を含む外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法の改正が成立した。新しい在留資格「特定技能」の対象となる14業種のなかには「建設」が入っているだけでなく、事実上永住が可能になる「特定技能2号」による受け入れについて、2019年4月にも建設業で実現する可能性がある。

 

外国人労働者については、デリケートな部分もある。国土交通省が今月19日にまとめた建設分野の運用方針案では、適切な労働環境の確保や悪質ブローカーの排除に向け、企業への人材紹介などの業務を担う新組織を建設業界が共同で設立するとしている。