木造は弱い?強い? 飯山市建協・士会飯水支部と信大が公開実験

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長野県神城断層地震から4年、長野県北部地震や中部地震からは7年以上が経った。その間にも全国では熊本地震をはじめ大規模な地震が発生、今年も大阪北部地震、北海道胆振東部地震が相次いで起きている。住生活基本法がうたうように、住宅もまた社会のインフラストックだ。日常的な維持管理、耐震診断・改修が進まない一方で、その重要性は日増しに高まっている。そうしたなか、飯山市建設業協会と県建築士会飯水支部が一般市民に向けて興味深い実験を行った。(内田悠斗、竹内美樹)


飯山市建設業協会(江口信行会長)と県建築士会飯水支部(手塚宏之支部長)は11月10日、信州大学と共同で、実在する木造建物の加力実験を実施。正味の耐震性能を知ってもらおうと一般市民に公開したところ、会員や行政職員を含め約150人が集まった。

 

実験に使ったのは飯山市の「城山児童館」。1971年以前に建築した木造平屋延べ約25坪の建物に、1981年14坪程度の増築を行っている。県の官舎を用途変更し児童の校外活動の場として使ってきたが、老朽化や機能低下によって今年廃館した。

 

建築年代の違う建物が2棟並んでいることから、解体の手が入る前に耐震性能の違いを比較しようというのが実験のねらい。既存部分を「旧耐震」、増築部分を「新耐震」に見立て、両者の間に油圧ジャッキを設置、均等に力が伝わるよう「つっぱり棒」をかませて両側に加力した。

 

監修した信州大学建築学科の松田昌洋助教によると、旧耐震の建物は層間変形角1/30程度の安全限界まで加力したところ抵抗力は約80KNでほぼ頭打ち。このとき、反力を受けた新耐震の建物は1/100程度の変形にとどまり、抵抗力はまだ伸びる状況にあった。

 

一般的に木造軸組は耐力が低く、水平力を受けると大きく傾き、部材が損傷することでエネルギー吸収能力を得る。が、あまりに耐力が低いと構造部材がズレて建物が崩れやすくなるため、新耐震基準では壁倍率を改定するとともに必要な壁の量を増やしている。

 

実験では、既存部分を旧耐震に見立てるため壁(筋かい)を一部撤去。意図的に耐力を低くし、積雪荷重を考えない状態で耐震診断評点を0.53に落とした。「実際、このレベルの木造は多い。残った耐震要素から最大耐力を40KNと見積もったが、意外と強かった」と松田助教は話す。

 

軸組の柱は105㎜角程度で接合部は金物なし。「それでも柱・間柱が多い分、めり込み抵抗が効いている。雑壁の抵抗も思った以上で、屋根が軽いことも影響し、結果的に想定を上まわった。壁だけをカウントした耐震診断より実際の性能が高くなる傾向はある」

 

進まない耐震診断・改修

 

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協、東京都)が今年8月公表した最新データによると、過去12年間に同組合員が実施した耐震診断で結果を把握している2万6317棟のうち、評点0.7未満は1万9415棟、評点0.7〜1.0未満は4582棟。いわゆる「倒壊のおそれあり」が、9割以上を占めている。

 

が、それらの施主に対するアンケート調査をみると、評点0.7〜1.0未満と診断された人のうち補強工事をした人は27.8%と3割に満たない。0.7未満と診断された人でも31.6%にとどまり、7割が補強を行っていない状況だ。

 

一般的に住宅は余分な空間がなく、用途上、全面壁や補強材の設置場所が限られる。費用や工期、仮住まいなどの制約も多い。とくに木造軸組は建築年代や地域性、使い方などによって耐震性能がまちまち。的確な状態把握とともに、施主と綿密に打ち合わせて最適な補強・改修手法を選ぶことが必要だ。

 

が、そもそも震度6強を超える大地震はいつ来るかわからず、一生見舞われない可能性もある。恩恵が見えにくいうえ制約が多く、手間がかかる耐震補強・改修は市場経済にのりにくい。

 

松田助教は「耐震補強のみでは目を向けてもらえない。他のリフォームとセットで建物に応じた補強を考えてほしい」と指摘。そのうえで「設計者と施主の『倒壊』に対する認識ギャップも大きい。被害をどこまで、どう抑えるか。変形しても倒れないようにするのか、できるだけ損傷しないようにするのか。合意には互いの理解が必要」と説く。

 

福祉・観光からもニーズ

 

半面、耐震補強・改修の社会的必要性は高まる一方だ。背景の一つは少子高齢化。子どもの独立、夫婦二人暮らし、一人暮らしといったライフステージの変化に対応して住み続ける、あるいは住み替えるにしても、住宅の適切なメンテナンスは欠かせない。

 

耐震性能はメンテナンスと密接に関係し、手入れがされない建物は急速に劣化する。歳をとってもなお元気に暮らし、住宅に手を入れ続けるには、居住者の身体機能の低下のみならず、地域コミュニティーとの融和まで考慮した改修、減築が不可欠だ。

 

もう一つの背景には、観光がある。白川郷に代表されるように、数多の風雪や災害に耐えて息づく地域固有の住宅はもはや独自の景観資源。各自治体が観光による地域振興策を打ち出すなか、スクラップによらない住宅の適切な維持更新は必須課題となっている。

 

これらを進めるには、市場経済にのりにくい補強・改修を生業にしていく担い手が要る。できるのは地域の工務店・建築会社や設計事務所以外なく、今回の公開実験の意味もそこ。松田助教は「入り口として一般の方に木造の実力を知ってもらうことが大切」と話す。

 

県北部地震や神城断層地震で応急危険度判定や住宅相談を行った飯山市建設業協会の江口会長は「現在は避難所も老朽化している。建設業と地域が一体となって耐震改修を進めないといけない」と発言。県建築士会飯水支部の手塚支部長も「被災地では『住み続けるにはどうしたらいいか』と多くの人から聞かれた。実験を見てくれた人たちが耐震診断・改修を考えるきっかけになれば」と話す。