働き方改革関連法成立、どうする建設業【緊急調査】

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働き方改革関連法が6月29日午前、参議院本会議で可決、成立した。柱となるのは、残業時間の上限規制、非正規労働者の待遇改善など「同一労働同一賃金」の実現、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」だ。なかでも建設業にかかわるのは残業時間の上限規制。また、労働者の健康確保を目的に、労働時間の把握をすべての企業に義務づけることなども盛り込まれている。建設業は規制適用まで5年の猶予が与えられているが、果たして「まだ5年ある」のか「あと5年しかない」のか――。複数の受注者に緊急調査を行った。(新建新聞「働き方改革」取材班)


ポイントとなる残業時間の上限規制は、原則として「月45時間・年間360時間(休日労働を含まない)」となる。臨時に特別な事情がある場合には、年間6カ月まではさらなる時間外労働が認められ「月100時間未満、連続する2カ月から6カ月のいずれの期間の平均も80時間(いずれも休日労働を含む)」が上限。年間では720時間(休日労働を含まない)が上限だ。上限を超えた場合、企業は罰則の対象となる。建設業は5年の規制適用猶予期間があり、大企業・中小企業問わず2024年4月1日からの適用となる。ただし建設コンサルタント、建築設計など建設サービス業は一般企業と同様に扱われ、大企業(資本金5000万円超で従業員数100人超)が2019年4月1日から、それ以外の中小企業は2020年4月1日から適用される。


「『法案成立だから』と、今から何かするのでは遅すぎる」というのは北信地区のゼネコン幹部だ。同社ではこうなることを見越し、数年前から人員確保に注力してきた。「この3~4年は採用活動に力を入れ、10人ほどの若手を確保した。この若手たちとベテランを組ませることで業務効率化を図る」という。「目先での現場利益は下がるが、業務を分担でき、長い目で見れば若手の教育・成長にもつながる」(同)

 

同じく北信地区のゼネコン社長は「法案成立を見据えていたとまではいわないが、長時間労働の是正のために今年に入ってICT機器を購入、導入した。設備投資で作業の効率化と平準化を図り、特定の人材にしかできない作業を減らす」とする。

 

5年の猶予がない業務系では、上小エリアのコンサル幹部から「すでにプレミアムフライデーには17時30分の退社時間を設定し、毎週水曜日はノー残業デーにしている」という施策や、長野地区の設計会社の社長から「社員一人一人の勤務時間を把握しながら、毎週役員ら上層部が率先して残業をしている社員に声をかけるなどしている」という取り組みが寄せられた。

 

対応これから、民間工事に懸念

 

むろん、懸念の声も多い。「ノー残業デーの実施や代休制度を推進しているが、なかなか減らすのが難しいのが現実。就業規則や賃金体系の見直しを予定しているが、具体的な内容はこれからだ」ともらすのは、松筑地区のゼネコン幹部だ。木曽地区のゼネコン社長は「生産性が下がらざるを得ない。工期拡大や労務単価の底上げがなければ厳しい」とした。

 

「休むより、働きたい社員もいる」としたのは長野地区の専門工事業の社長だ。「日給月給が大半をしめる専門工事業者の従事者は、残業が規制されれば収入が大幅に減少してしまう」(同)

 

民間発注の工事について心配する声も多い。「行政が発注者ならなんとかなるが、民間相手だとどうしても工期を間に合わせないといけない」(木曽地区のゼネコン社長)という声も目立った。同じく、解決には「民間発注者の理解が必要」というのは松筑地区のゼネコン幹部だ。「民間の工事に対しても、行政からの後押しを期待する」(同)

 

労働時間の把握が求められる点も懸念材料になっている。上小地区のゼネコン社長は「代理人の場合はきちんと出退社時間の記録を付けていないケースが多い。直行直帰も多く、現場にタイムカードを置いていないのが当たり前」と話す。複数の企業からは労基署から「タイムカードの設置を求められている」「パソコンのログのチェックも示唆された」という声が出た。

 

担い手確保へ対応は必須

 

ただし、ほぼすべての会社で、担い手不足のなか人材確保のためにも働き方改革関連法への対応は必須という考えは共通しているようだ。長野地区の専門工事業の社長は「担い手の確保を見据えて取り組んでいかなければならない課題であることは明確」とし、飯田地区のゼネコン社長は「労働時間が多く、健康に危険が及ぶような会社では、若い人も『この会社に入ろう』とは思わない」とした。「ICTにすべてを期待してはいけないが、新たな取り組みを行い、時代の変化に対応していかないといけない」(同)