新年度から新たな取り組み 5つの施策に注目

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 新年度を前に、県建設部が4月1日以降に実施する主な施策をまとめた。週休2日を筆頭に、労働環境の改善に向けた取り組みのインパクトが大きい。下請会社、技能労働者まで対象が広がり、建設産業の構造や商習慣にもメスが入ろうとしている。カギは利益、そして賃金が確保されるしくみの確立だ。「魅力」と「持続」の両立が欠かせない。(竹内美樹)

 

1 全工事で週休2日がスタート
■県発注工事における週休2日の実施

県発注のすべての工事で、受注者が週休2日を希望した場合に、以下の取り組みを行う。
(1)受注者は工事着手前に週休2日を考慮した施工計画書を発注者に提出
(2)発注者は週休2日を実施するうえで必要な工期の設定、間接費の負担、達成度に応じた工事成績の加点を実施
実施対象:県発注の全工事/実施時期:4月以降の公告案件

 

 来年度の目玉となる施策。県はこれまでにも週休2日モデル工事、週休2日を評価する総合評価落札方式に取り組んできたが、それらを発展的に終了。施工者希望型で、すべての工事を対象とした週休2日に踏み切る。与えるインパクトは大きい。

 

 県の工期設定は現在も週休2日前提だが、今後は事前の施工協議で受注者からの休日計画を受け付け、必要な場合は工期変更に応じる。工期延長で増える間接費は共通仮設費・現場管理費をプラス補正。週休2日を達成できたら工事成績評定で評価する。これまで以上に力の入った取り組みだ。

 

 が、現状では4週8休を就労規則で規定する会社はわずか。完全週休2日となると1割以下で、県建設業協会の最新の調査でも、導入済みの会員は5%だった。かつ今後の導入意向も会員の51%は「業界の動向次第」と答え、29%は「しない・できない」と答えている。

 

 最大の理由は工期延長にともなう経費の増加、時間あたり人件費の上昇、それによる利益率の低下だ。県は国土交通省に準じて間接工事費を共通仮設費に1.02、現場管理費に1.04を乗じて補正するが、同協会の試算によると、国の補正では実際の工事費の増加率に6%強も追いつかないという。

 

 実施できない現場が増えると、かえってモチベーションが下がる懸念もある。県技術管理室の猿田吉秀室長は昨年11月の2017年度第3回契約審議会で、当面は受注者の意思を尊重して運用すると強調。「結果を検証したうえで次の対策を考えていきたい」とした。運用開始後、各企業がどのような反応をみせるか注目だ。

 

2 技能労働者への対策が本格化

■建設職人基本法の県計画策定

「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」(建設職人基本法)にもとづき、建設工事従事者の安全と健康にかかる施策の県計画を定める。計画策定は県建設業協会、県建設労働組合連合会、長野労働局、関東地方整備局、県で構成する県建設工事従事者安全健康確保推進会議(会長:長田敏彦県建設政策課長)で行う

実施対象:民間含む全工事/実施時期:6月~7月に計画原案を提示、8月~9月に取りまとめ、2018年度内に策定の予定

 

 週休2日導入の阻害要因には、日給月給制や単価契約による賃金形態もある。「休みが増えると収入が減る」といった技能労働者の課題。実際、2016年度に県のモデル工事に携わった技能労働者の57%は、週休2日を「不要」「そこまでは不要」と答えている。

 

 県建設労働組合連合会のデータでは、公共工事に携わる常用職人・一人親方の実際の賃金水準は平均で設計労務単価の6割程度。「現状では2次以下の下請は週休2日に対応できない」と訴えるゆえんで、根本的な問題の改善が急務だ。

 

 来年度に動き出す施策は、一つは国土交通省による建設キャリアアップシステム。もう一つが、建設職人基本法にもとづく県計画の策定だ。3月16日、第1回の会合が開かれ議論のスタートが切られた。

 

 計画推進にあたっては、労働安全衛生法上の「労働者」にあたらない一人親方に対し「特段の対応」が必要とされ、法令順守、安全衛生経費の適切な計上、労災保険の加入促進などが求められている。計画にはすでに動き出している施策も盛り込まれるが、明文化されることで取り組みに拍車がかかることが期待される。

 

3 社保加入の確実な裏付け求める

■建設工事等の標準請負契約約款の改正

建設工事標準請負契約約款を改正し、(1)「請負代金内訳書」へ社会保険にかかる法定福利費を明示(2)社会保険の未加入事業者は1次下請者としない-という条項を新たに規定する。森林整備業務においても同様の取り組みを行う

実施対象:建設工事等入札参加資格者/実施時期:10月1日付で約款改正。以降に契約する工事に適用

 

 2011年度からはじまった社会保険未加入対策は現在、県の建設工事等入札参加資格者の95%が加入するに至った。今後はその裏付けとなる原資をしっかり確保していく段階だ。

 

 具体策が、請負代金内訳書への「法定福利費」明示。材工一式の単価契約ではみえづらい費用を「見える化」し、裾野の下請まで確実に行き渡らせる。これまでの積算体系や契約形態が変更に迫られる可能性もありそうだ。

 

4 大型工事の失格基準引き上げ

■2億円を境とする失格基準価格の見直し

2億円以上の工事(WTO案件を除く)の失格基準価格を、予定価格の87.5~92.5%に引き上げる

実施対象:予定価格2億円以上の工事/実施時期:4月以降の公告案件

 

 2億円以上の工事の失格基準価格は現在、予定価格の82.5~87.5%。2億円未満の工事より0.5ポイント引き下げて運用している。これを今回の改正で、100万円以上2億円未満の工事と同じ水準に見直す。

 

 予定価格の算出は通常、工事費が高くなるほど直接工事費の割合が増え、諸経費の割合が小さい。中央公契連モデルが定める低入札価格調査基準の計算式は、工事費が高くなるほど調査基準が上がるようになっているが、県はコスト縮減の幅を確保する観点から2億円以上の工事の失格基準価格を引き下げて運用してきた。

 

 これに対し県建設業協会が県発注工事の受注者にアンケート調査を行ったところ、2億円以上の工事は確保できた一般管理費の平均が2.6%にとどまり、1~2億円の工事より5.2%も低かった。

 

5 受注希望型に低入札調査を導入

■建設工事における低入札価格調査の実施

総合評価落札方式を含む受注希望型競争入札に、低入札価格調査基準価格を導入する。基準価格は、通常の受注希望型は予定価格の90%、総合評価落札方式は変動制(予定価格の90~92.5%)。これにより、総合評価落札方式の失格基準価格は低入札基準価格より2.5%程度低く設定し、両者の間に幅を設ける

実施対象:総合評価落札方式を含む受注希望型競争入札/実施時期:4月以降の公告案件

 

 県の受注希望型競争入札では現在、低入札価格調査基準価格と失格基準価格を同額とし、これを下まわった者は調査を省略し即失格。その代わり予定価格の90%未満(2億円以上の工事は85%未満)で落札した者には、契約後10日以内に調査書類の提出を求める「契約後確認調査」や主任技術者の別途配置などを求める「技術者別途配置等」を実施している。

 

 今後は低入札価格調査基準価格が導入されるため、これを下まわって落札候補になった者には、契約前(候補者通知日の翌日から2日以内)に調査書類の提出を求める低入札価格調査を実施。これまでの「契約後確認調査」は廃止する。ただし「技術者別途配置等」の措置はそのまま引き継ぐ。入札参加制限のペナルティーを受ける辞退の回数は、年2回から年3回に拡大する。

 

 また総合評価落札方式では、調査基準価格と失格基準価格の間の入札に対し価格点をマイナス補正。調査基準価格を最高点とし、そこから失格基準価格に向けて下降するようにする。